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英仏羊毛最前線を視察

ベストーウールクラブ


 ベスト・ウール・クラブ(略称=BWC・米山元章会長、正会員13社、賛助会員4社)は、04年度事業計画の1つとして、6月20〜27の8日間、イギリス・フランスの羊毛市場を視察する研修旅行を実施した。一行16人は、英国羊毛公社、フランス羊毛協会を公式訪問したのを始め、ウールの毛刈り・選別・洗浄・各種加工工場をつぶさに見学、今後の羊毛ふとんの生産・販売に生かしていく。1985年、羊毛ふとんの高級化と品質安定化を目指し、結成されたBWCは来年(05年)設立20周年を迎えるが、独自の品質基準づくりに向けて、研究・討議が進められており、今回の英仏羊毛視察も、"ふとんに最適なウールを再確認”するために計画されたもので、一定の成果を上げることができたことで、品質基準制定に拍車が掛かりそうだ。

英国羊毛公社を訪問


オークションの疑似体験も


  2000年3月のオーストラリア、ニュージーランド視察から4年ぶりの開催となったBWCの研修旅行には、米山元章会長、西岡一則幹事、斉藤栄一会計監事ら16人が参加。今回は、各社の生産現場に携わっている若手中堅社員が多く、ハードスケジュールにもかかわらず、精力的に日程を消化した。
 視察研修のポイントは、①英国羊毛公社グレーディングセンター②英国羊毛公社本部③トーマスチャドウィック・スカード工場④ハワーススカーリング・スカード工場⑤スペシャリティ・プロセッサーズ・ブラッドフォード(SPB)社(羊毛防縮加工工場)⑥ランプロー・ファーム(農場)⑦バスコ・スカード工場⑧フランス羊毛協会の8カ所。
成田からパリ経由で約17時間、英国マンチェスター空港に降り立った一行は、バスで最初の訪問地、ブラッドフォードに到着。午後9時を回っても白夜のように明るい中で、明日からの視察に備えた。
 翌21日からいよいよ視察を開始。まず、英国羊毛公社認定のグレーディングセンターを訪問。オークションに掛ける前の羊毛を選別する所で、全国には17カ所あり、約400種の羊毛を扱っている。
 農場から送られてきたグリース(脂付き)ウールは、個別(農場ごと)に選別・管理されているのが特徴。
同センターでは、1日当たり6000キロを選別、カーペット60%、ふとん・衣料40%の割合。ちなみに、英国の農場は約6万軒で、1軒当たり650キロ(200〜250頭所有)の羊毛を生産する比較的小規模な農場が多い。

選別には、この道40年という熟練したソーターが手際良く、タイプ別に仕分けられ、オークションに回される。英国とフランスの羊毛の取引形態で異なるのがこれ。フランスは農場とシッパーとの自由取引だが、英国では毎年、ブラッドフォードとスコットランド(スコティッシュ)で22回、オークションが行われる。


 一行が到着する1週前(6月16日)に03年度最後のオークションが開かれ、200万キロが売買されたが、ふとん用は少なかった。
オークション会場となる英国羊毛公社本部を訪ねた一行は、リチャード・パスモア日本支部エグゼクティブマネージャーの歓迎を受けた後、オークションルームに入り、パソコンによる、オークションの疑似体験に臨み、暫しウールマーチャントの気分に浸っていた。

英国洗浄工場2社へ


クロイ防縮工程も見学


次に、向かったのは創業140周年(設立100周年)のトーマス社で、91年にはアン王女も訪れた老舗のスカード(洗浄)工場。
べール開毛された羊毛は、2つの生産(洗浄)ラインで、年間2000万キロ(グリージー)が加工される。羊毛1キロ当たり4リットルの水を使い、廃水処理にも厳しい基準があるため、「スカーリングコストは決して安くない」と言う。
 2つのラインは、毛足の長いカーペット用と短いふとん用やテキスタイル用に分けて稼働、5つの浴槽(洗濯機)の水温に変化を付けると共に、用途別に洗いのスピードも変えているのが特徴だ。
また、同社の新しい取り組みとして、"オーガニック農場"(申請済み)による、クリーンな羊毛の洗浄加工が挙げられる。洗浄には、オーガニック洗剤を使用し、ベビーや医療用の羊毛を提供していく。
同社では、羊毛の水分率や残脂分など、コンピューターを使って品質管理を徹底。また、洗浄後、乾燥・ウールビン(保湿)、梱包出荷に至るまで、数度の検針工程を行い、不良品を水際で防いでいる。
次に訪れた、ハワース社もスカード工場だが、規模的には前者を上回るようだ。洗浄ラインも3ラインあり、カーペット80%、ふとん10%、コーミング(すそモノ)10%の生産比率。
特に、洗う前にブレンドを均一にするため、ニュージーランド製の「ブレンディング・ホッパー」を導入しているほか、洗濯機も8槽式(2ライン)を採用し、水洗い、リンス、ブリッジ工程を経て、よりきれいな羊毛に仕上げている。
英国では20年前に15社あったスカード工場が、今ではこの2社だけとなっており、羊毛産業の厳しい現状を物語っている。
 この後、防縮加工「クロイ」で、英・独・伊3力国の独占製造販売を行っているSPB社を視察。洗い上がり羊毛の開毛から除塵、防縮(クロイ加工)、乾燥までの工程を見学。薬剤(塩素)使用による廃水処理方法などに、参加者から質問が寄せられたが、「国の基準に則り、問題なく処理している」との回答。現在、1日10〜11トンを加工しているが、ウールトップが多いとか。
 同社では、"人体に害を与えない繊維製品の世界基準"「エコテックス規格100」も取得しており、こちらも関心が高かった。
 英国最後の視察先として、一行が訪問したのは、オックスフォード種(種羊)を抱えるランプロー農場。
1854年、30頭のメス羊からスタート。今年で設立150年を迎える"ブリーダー"だ。英国では"スタッド"(種羊)を持っている農場は一流と言われている。同農場では、種羊をほかの農場の雌羊に種付けすることもしている。
現在、英国では小規模に属する11エーカー(4・5ヘクタール)の敷地に、30頭のメス羊も飼育している。当日は、シーリング(刈り取り)の実演もしてもらったが、1頭当たり僅か10分足らずで終了。その"熟練の早業"に、一行は感心した様子。

洗化炭等特殊加工を


フランス羊毛協と会談も


 英国に別れを告げ、一路フランスに向かった一団は、97年ユネスコの世界遺産認定を受けた城(シテ)を持つ城下町、カルカソンヌに到着した。
翌23日、マザメ市にあるスカード工場、バスコ社を訪問。同社エリック・アシマー氏を始め、シッパーのアントワンヌ・ブルナック氏らが歓迎に出迎え、工場内を視察した。
 19世紀から羊毛事業に乗り出した同社は、1923年会社を設立。現在、37人の従業員を抱え、3交替(24時間操業)で月間500トンの洗浄と、100トンの化炭羊毛を生産。フランスでもスカード工場が減り続け、同社が唯一となった。
現状では、フランス全土から毎年1300万〜1500万キロ(英国は3700万〜3800万キロ)の原毛が産出。ラコーヌとテクセルのカテゴリーに大別されている。
 この10数年、減り続けてきた羊の頭数も、最近では歯止めが掛かり、少しずつ増加の兆しも出てきており、唯一の同社にオーダーが集中してきたため、推測だが3交替制を取っているのではないだろうか。
洗浄ラインは、英国とほとんど変わりないが、浴槽で炭化させるもので、毛を開く効果のある炭酸を使用。6つの浴槽間には口ーラーを配備し、送り込まれる羊毛を1回1回絞る工程が、英国では見られなかった。
一般的な洗浄のほか、顧客の要望に応じて、防ダニ、防虫、漂白加工も行っており、化炭加工もそのーつ。
"洗化炭"と言われるこの加工技術は、グリースウールを洗浄して乾燥させる間に、硫酸と羊毛に付着した草や木の実などの不純物を炭化させるもので、化炭後もう一度洗浄・乾燥工程を経て完了となる。
 翌24日には、1945年に設立されたというフランス羊毛協会(会員25社)との"船上会談"がセッティングされた。半年前に新会長に就任したヘンリー・アルノー氏を始め、会員企業が出席、情報交換した。
同会長は、フランス羊毛(スカードウール)の主な輸出先として、日本(50%)と中国(30%)を挙げると共に、フランス羊毛の特徴でもある、自然の弾力性やクリンプ性に優れているため、掛け・敷きふとんやマットレスに最適だと強調し、日仏羊毛業界の友好関係促進を熱望した。

羊毛市場復権へ結束


英仏団体に協力要請を


 今回の英仏羊毛視察では、オランダ羊毛の紹介も行われ、エクセルコのグリット・ビアント氏が、その発祥地(テクセル島)でもあるテクセルウールの有用性をアピールした。
このほか、羊毛以外の勉強会も開催。ADFグループのドミニック・カーペンター氏が、モヘヤ関連の糸を含むふとん向け原料を提案。トアンズントア社のオリバー・アウディ氏は、モヘヤの毛布やベッド・ソファカバーなどをプレゼンテーションした。
こうして、8日間の英仏羊毛視察は、瞬く間に終了。
参加者からは、今回の貴重な体験を、今後の羊毛ふとんの生産・販売に生かしていくという意欲が感じ取られた。
パリで開かれた定例会後、米山会長は、「シーリングから、グレーディング、スカード工程が、より多くの時間とコスト(人手)を経て、日本に入り、更に我々も多くの従業員を使って商品化をしているわけで、現実の羊毛・羊毛混ふとんの(低水準な)価格体系からは余りにも乖離し過ぎている。
今回の研修旅行をステップに、品質向上はもちろん、適正価格、適正利潤が取れる羊毛ふとん業界になるよう、BWC一丸となって取り組んでいきたい」と業界にも協力を呼び掛けていく考えだ。
また、西岡幹事は、今回の視察旅行を通じて、BWC会員の共通キーワードである"スチームドライ"を生かせる羊毛原料の"発掘"に注力して、英国羊毛公社本部とフランス羊毛協会に対して、様々な協力を要請した。
BWCの要請に、英仏両団体がどう対応するか、今後の動きに注目したい。


 【BWC英仏羊毛視察旅行参加者】(敬称略)
米山元章(㈱ヱビス)▽西岡一則(大恵ウール㈱)▽斉藤栄一(㈱カメックス)▽池田毅(㈱池田綿業)▽後藤利広(アサギ㈱)▽麻生幹也(㈱フジライフ)▽永田真一(㈱ダルマックス)▽金井一浩(大東紡寝装㈱)▽田邉寛(池田産業㈱)▽坂井賢治(㈱ヱビス)▽柿田博志(丸三綿業㈱)▽後藤稔(カネヨウ㈱)▽大橋美知(イトチューウールリミテッド日本支社)▽永井一宏(名川繊商㈱)▽村田哲夫(㈱日本寝装新聞社)▽村上貞雄(日通旅行)
(寝装リビングタイムス2004年7月21日掲載記事)




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