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科学で追い越せないウール

生物だけがもっている不思議
1940年頃、合成繊維が誕生しました。人間が動物や植物の手を借りていた天然繊維に対し、自らの手て創造した人造繊維の誕生です。その後沢山の繊維が世に出てはそのたびに取捨選択されてきました。この合成繊維を作るために天然繊維の科学的な解明か進められ、その研究の中からなぜ羊毛が優れた繊維なのかがしだいにわかってきたのです。

しかも、羊毛は調べれば調べるほど、不思議な繊維なのです。その内部には多くの矛盾した性質が巧みに調和し合って存在しています。合成繊維は羊毛を手本として次々とその性質を変えてきました。ですが、いまでも生物の神秘には遠く及びません。その神秘さは、次のような“七不思議”に集約できます。七不思議とは——
 ① 暖かい繊維
 ② 湿気を吸収し、また、放湿する
 ③ 弾力性がある
 ④ 燃えにくい性質がある
 ⑤ 染めやすく色落ちしない
 ⑥ 汚れにくい(水をはじく)
 ⑦ フェルト状になる性質がある

ウールの秘密を探る

ウロコ状の繊維


- 電子顕微鏡で見たウール -
 羊毛は、私達の皮膚やツメと同じように蛋白質の細胞からできています。1本の繊維の断面を拡大してみるとその構造は、表皮部、皮質部(コルテックス)、毛髄部の3部から成り立っています。
 羊毛の表皮は、屋根瓦をふいたようにウロコ状に重なり合っています。このウロコをスケールといいますが、スケールは規則正しく毛先の方向に突出しているのです。ウロコ状の表皮、これが羊毛独特の特徴です。
 このウロコがあるために繊維同士が絡み合うわけで、糸にしやすく、糸にしたらなかなか抜けにくくなるのです。またこの表皮は、湿気は吸収するが水滴をはじくという不思議な機能をもっています。外部の湿度に応じて湿気を吸収したり放出したりするのです。羊毛が"第2の皮膚"といわれる理由がここにあるわけです。
 皮質部(コルテックス)の構造は、紡錘形のフィブリルが石垣状に結合していて、さらに各フィブリルは、プロト・フィブリルというごく小さいフィブリルが集合してできています。
 皮質部は、羊毛繊維の中心部といえる部分ですが、この皮質部はそれぞれ性質の違う2つの部分に分かれ、これが羊毛の独特の特徴である"ちぢれ"を生むことになるもとなのです。

ちぢれの不思議


ちぢれの正体


 羊毛のちぢれは、1本の毛の内部で性質の違った二つの部分がちょうどかまぼこを2枚貼り合わせたようになっているためです。ちょっと専門的な説明をしますと、わん曲した内側は親酸性皮質組織、外側は親塩基性皮質組織で、前者をAコルテックス、後者をBコルテックスといいます。
 このちぢれの謎を解き明かしたのは、日本の堀尾正雄博士と近土隆博士(いずれも京都大学)でした。原理を簡単に説明しますと次の通りです。

パイメタルと同じ原理

 電気ゴタツなどは、ある温度になると自動的に電気が切れます。これはサーモスタットという温度調節器か働いているからですが、その中にある大切な部品が"バイメタル"です。
 バイメタルは、膨張率の異なる2種類の金属の板を貼り合わせたもので、温度の低い間はまっすぐですが、高温になりますと、表裏の膨張に差が生じるため、そり返って曲がってきます。そのとき電気の接続が切れてそれ以上に温度が上がらなくなるのです。
 羊毛もちょうどこのバイメタルのように、その本体は2枚のかまぼこ型をした部分が貼り合わされた状態になっています。これは羊毛が毛根から生えるときに、種類の異なった2種類の細胞から作り出されるために、微妙な違いをもつAとBの2層構造となるからです。
 A・Bの2層構造の微妙な差により、空気中の湿度や水中での酸やアルカリに違った反応を示し、まるでバイメタルが熱で曲がるように繊維が弧を描いてちぢみ、らせん状に伸びていくのです。

伸ばしても、すぐ元通りに


 この羊毛のちぢれを「クリンプ」と呼びます。羊の身体には非常に沢山の毛が密生しているので、1本1本の毛が単独で自由な型をとることができずに、らせんを引き伸ばしたようなカール状になります。細い繊維ほど、カールが細かく、太いものほど粗くなっています。
 羊毛のクリンプは、羊毛の構造自体にあるため、糸や織物、カーペットに加工される過程で、何度伸ばされても、また容易に元通りに戻るのです。また湿度の変化によっても変ってくるので、繊維があたかも生きているように動きます。このちぢれこそが、人間が衣料や寝具に羊の毛を選んだ最大の理由といえます。もし羊毛がまっすぐな繊維だったら、暖かい肌ざわりや保温性や弾力性をもつこともできなかったでしょう。

冬、暖かく、夏涼しい繊維


空気を着る


 ウールふとんに触れてみると暖かく感じさせるのはふとんの構造とワタの中に、沢山の空気を含んでいるからです。空気の熱伝導率か大変低いために、繊維組織内にある空気が外部の冷たい空気を防いでくれるというわけです。ちなみに、水は空気の25倍、ガラス繊維は28倍、綿は2.4倍も熱伝導度が大きいことがわかります。
材 料  空気を1とした 
比 較 数 値
 空気
 水
1
25
 綿   S=0.081
 絹   S=0.101
 羊毛 LS=0.135
2.4
2.1
1.6
 "ふくら雀"をご存知でしょうか。冬の寒い日に木や幹先にとまって、全身の毛をふくらましている雀たちをいいます。羽毛の中に沢山の空気を取り込んで、皮膚と外の冷たい空気との間に空気の厚い層を作るためなのです。
 ウールのふとんが暖かいのも、これと同じ原理です。"空気を着る"といわれるくらいに、ウールの中には空気が含まれており、その空気の量は普通60%にものぼるといわれます。空気を含む理由が"ちぢれ"にあるのです。ちぢれた繊維で、フワフワした感じ、これがなければ空気を含ませる空間がないということになるわけです。

吸湿性があるから暖かい


 ウールが暖かいのは、空気のせいだけではありません。ウールの吸湿性のよさも大きく作用しています。気体となっている水分がウールに吸収されるとき、厳密にいいますと気体から液体に変わりますが、そのときに多量の熱を外界に発散します。
 これは、ヤカンの中で熱せられてお揚が蒸発し、フタに吸着して熱を発散して冷え、水滴となっていく過程に似ているといえます。

夏、涼しいのは


 多量の空気を含んでいるので空気の厚い層かでき、それが夏には暑さを遮断する働らきをして、"夏、涼しい繊維"となるのだということは、だれもが容易に想定できるところでしょう。
 ウールが涼しいのにも、まだ、他にも理由かあるのです。それは、ウールの吸湿性です。ウールに吸収された水分は、厳密にいえば液体状となっているわけですが、この水分は放出するとき気体となり、外界から熱を取るという前に述べた作用と逆の働らきをします。
 例えば熱砂の国アラビアでは、冷たい水を確保するのに素焼きの壷にそれを汲み置きます。これは素焼きの壷の周囲の細孔からじわじわと内部の水が浸み通り少しずつ蒸発し続ける際に多量の熱を奪うので、内部の水温か下がる"蒸発潜熱"の作用を利用した方法です。ウールもこの壷に似た働らきを繰り返すわけです。
 ウールが涼しい繊維だといわれるのには、空気と水のこんな不思議な、しかもとても科学的なシカケがあったのです。

水をはじき吸収する不思議


矛盾の正体は

 ウールと水分とのかかわりあいが、冬の暖かさ、夏の涼しさに大きな役割りを果していたわけですが、ウールと水分との不思議なかかわりあいをもう少し調べておきましょう。
 ウールの吸湿性は、下表のように群を抜いて高いといえます。ところが、ふとんに限らず靴下でもムレたり、ジメジメした嫌な感じがしません。また、純毛のコートを着て小雨にあっても、防水加工がしてあるわけでもないのに、軽く叩くだけで水滴がはじけ飛び散ってしまい濡れません。
 湿気を吸収する性質と、水をはじくという矛盾した性質が共存するという不思議さは、実は、ウールの繊維の表皮組織の構造によるものなのです。
 ウールの繊維の一番外側、表面の層をエピキューティクルといいますが、これは水をはじく性質があります。内側、表皮内のエンドキューティクル、エキソキューティクルは、反対に親水性です。さらにエピキューティクルには、極く細かい孔があります。そのために、エピキューティクルは、水滴ははじき返すが、気体となっている水は、この細孔を通過させて、繊維内部の親水性の層に浸透させますし、またその逆のコースで発散させるわけです。これが、矛盾の正体です。この結果、ウールの吸湿性は、下表のように他の繊維に比べかなり大きくなっています。ちなみにウール繊維の集合体は、空気を含んでいればいるほど、つまりちぢれの高いものほど濡れにくいのです。ウール繊維の塊が濡れるのは、まず繊維表面に含まれている空気が外へ出され、次に水滴が繊維表面に移行します。つまり空気を沢山含んでいることが、濡れにくくするわけです。
吸湿率が大きいと寝ている間にかく汗を水滴にならないうちにすいとります。 吸湿による発生熱量が大きいと、濡れたときや大気の温度が低くなったとき、保温能力を発揮します。

弾力性の不思議


切れないで30%も伸びる


 ウールはゆっくり引き伸ばすと、切れないで約30%も伸びます。これを他の繊維と比べてみますと、もっとも伸長率の大きいアクリル系繊維でさえも、ウールに加えた力の約2倍の力が必要となります。
 またこのときウールなら、伸ばす力を緩めるとすぐ元通りになろうとし、しばらくすると完全に元の長さに戻ることが証明されています。ウールの優れた弾力性を示すものといえますし、ウールふとんのクッション性のよさが愛用者から評価されている料学的根拠でもあります。
 例えば、カーペットなどで家具類を長期間置いておくと、跡がついてしまうことがあります。こんな場合でも素材がウールなら、蒸気を当てるだけで元の状態に戻ります。これもウールの繊維のちぢれの働きによるものなのです。伸ばされていたウール繊維が、蒸気に浸されたことで再びリラックスし、元の状態に戻るのです。これを緩和収縮と呼んでいます。
 こうしたウールの繊維の性質こそ、ウールふとんにした場合の"圧縮弾性"のよさにつながるものです。ウールふとんがいつまでもふんわりしているのも、またすぐふくらみが回復するのも、こうしたウール本来の性質に基づくものなのです。

燃えにくい繊維の不思議


事故防止に最適


 化学繊維の多くは、一度火がつくとチリチリと燃えはじめ、燃えつきるまで消えませんが、この点がウールと化学繊維との大きな違いです。ウールを燃やすと、毛髪や羽毛と同じように特有の臭気を発して燃えますが、焔から離せば、1本1本の繊維の端に黒いコプ、あるいは焦げた小さな球ができて、燃えるのが止まります。ウールは燃えにくい繊維、難燃性に優れた繊維といえます。
- タバコを落としても - - 燃えにくいのです -

飛行機内にも


 このウールの難燃性を利用して、いろいろな使われ方がしていますが、当然のこととしてインテリア関係が多くなっています。飛行機内のシートやカ−ペットはもちろん、窓のカーテンなどもすべてウールが使われているのです。
- 例えば飛行機の中 -  - シート・カーペット・カーテンに! -  - 例えばF1レース -  - よくご覧になるとウールマークが! -

汚れにくく染色性がよい不思議


吸湿性と19種のアミノ酸


 ウールの色の深さは定評があります。これはウールの高い吸湿性のため、染料が繊維の中に十分に吸収されムラなく染めあがるからです。
 また、ウールは羊の身体の一部である皮膚が変化したもので、成分は19種類のアミノ酸によるケラチンという蛋白質です。染色は、染料とアミノ酸がよく合うかどうかでよしあしが決まります。ウールの場合、19種ものアミノ酸があるので、どの染料とも合いますし、深い色合いに染まるわけです。

汚れにくい繊維

 ウールの繊維の構造が、うろこ状の表皮があると述べましたが、この表皮の表面は水をはじく性質があり、このため、汚れにくい性質をもっています。

ウールのよさの謎解き

 いままで述べたウールの不思議の"謎解き"を、簡単にまとめると下図のようになります。

資料提供ザ・ウールマーク・カンパニー

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