環境のために

2. このままでは宇宙船地球号が危ない

宇宙船地球号は近年の急激な人類の酷使によって、あちこちで傷が口をあけ、ほころびが広がっています。この状態で自然破壊が続くならば、近い将来宇宙船地球号の乗客は破滅します。

(1)増えつづける人口

つい先日、世界の人口は60億人を突破しました。わが国では少子化が問題になっていますが、地球全体で見るとすさまじい勢いで人口が増えつづけています。19世紀初頭には10億人であった人口が、国連の「世界人口白書」によると1920年に20億人になり、1960年に30億人、1974年に40億人、1987年に50億人を越え、その12年後の1999年についに60億人を突破しました。この急激な人口増加は過去30年ほどの突発的現象であり、その80%が発展途上国での人口増です。1950年には先進国対発展途上国の人口比は1対2であったものが、現在は1対4に、さらに、2025年には1対5になると予測されています。その結果、諸々の歪みが現われています。

(2)増えつづける飢餓人口

日本ではここ数十年、餓死による死亡は無いとの事ですが、1980年に発表された世界銀行の報告によると、「健康上の危険や、子供の発育を阻害する栄養不良人口は3億4,000万人、労働に耐える栄養が摂取出来ない人が7億3,000万人いる」と言います。また、ユニセフの”子供白書(1987年版)”によると、「栄養不良による疾病によって毎日4万人、年間1,400万人以上の乳幼児が死亡している」と報告されています。世界の穀物生産量は約20億トン。その穀物の半分は4分の1の人口しか居ない先進国で消化され、残りの半分を4分の3の人口を擁している発展途上国で取合っている状態です。この格差はますます開く一方です。
すでに安全な水を飲める地域は、開発による環境の汚染とそれに伴う災害で急速に減り、人類にとって水は石油以上の利権の対象となり始めています。

(3)減りつづける森林

地球の全陸地面積は約130億ヘクタール。19世紀の初めにはその半分近くが緑に覆われていたと言います。しかし、1960年には陸地の4分の1に減り、現在では国連食料農業機関(FAO)の統計によると約28億ヘクタールと、5分の1に減ってしまっています。
森林は水を保つ巨大なダムの働きをしています。この伐採によって地球の温暖化が促進され、土壌の流出、大災害の発生等々、地球が全ての生き物にとって、危険な環境に変えられています。特に、熱帯雨林が切り倒されると、今まで陽が直接当たらなかった地表に強い陽が当たり、水分の蒸発を促し、地表に塩分が蓄積される結果を招きます。塩分農度が2,000〜3,000ppmになると殆どの作物は育たず、コメは通常600〜700ppmで枯れてしまうと言われています。このように破壊された森林跡地は、利用価値の全くない荒れ地となり人を寄せつけません。現在、数ある食物の中で、最も安いのは牛肉だと言う指摘があります。これは、ホルモン剤を使った飼育の他に、熱帯雨林を安易に切り開き牛の放牧に使う事で、安い牛肉が供給されるからだと言われています。一見安くて安全な食べ物も、大きな目で見たときに環境を破壊しているのかもしれません。

(4)増えつづける砂漠

過重な人口を養うために耕地を無理に拡大し、酷使し、許容頭数以上の家畜を放牧する結果、想像をはるかに上回る速度で自然環境が悪化し、最終的にはその土地は荒廃化します。 また、人口増は薪の消費を増やし、焼畑による森林破壊に追い討ちを掛けます。人が一人増えると家畜が4〜5頭増えると言い、荒れ地に放牧された家畜は餌がなくなると植物の根まで掘り返して食べてしまい、生態系の変化まで来たしてしまいます。
現在、世界中で毎年600万ヘクタール、つまり日本の全耕地(約540万ヘクタール)を上回る面積が人類の活動によって破壊され、完全に砂漠化しています。その砂漠化した面積は南米大陸に匹敵する35億ヘクタールと報告されています。(国連環境計画の報告による) サハラ砂漠の南側では毎年150万ヘクタールずつ砂漠が広がり、これは、1時間ごとに170ヘクタールの新しい砂漠が出来て行く計算となります。そこでは、1日に16mずつ砂漠が南に広がっていると言います。これも、人間の自然破壊の結果の一つです。

(5)増えつづける災害

発展途上盟での死亡を伴う大災害が1976年を境にして急増しています。「これは、人口増加と土地の不足から、人間が自然を破壊した災害危険地帯にも住まわざるを得なくなったことが原因で、気象条件の変化ではない」と、ロンドン大学のB.V.シャー教授は説明しています。

(6)増えつづける地球の温暖化

1982年2月にEPA(米国環境保護庁)がまとめた報告によると、「二酸化炭素とメタンの濃度は、産業革命以来、劇的に増加している。また、フロンが大気中に初めて混入してきた。人間活動による急激な影響によって、大気の組成も気候も安定状態にはない。どのような筋道をたどるにせよ、ここ数十年の内には重大な地球変動が予想される。」と結んでいます。(米本昌平著「地球環境問題とは何か」岩波新書、P74による)
森林の消滅と、無防備で急激な経済成長によって、温室効果ガスの排出量が急増し、21世紀の終わり頃には地球は2〜6℃の温度上昇が予測されます。(前掲書による) この温度上昇によって、予想をはるかに上回る大きな被害が人類に降りかかって来るものと思われます。
人類の豊さは、地球が私たちの想像外の長い時間をかけて蓄えた資源を、急速に消費する事で得られています。例えば、何億年もかけて作られた石油を、わずか100年、200年で使いきる急激な消費。地球の時間に置きかえれば、人類はわずか数十年で、数億年単位の時間を消費したことになります。次の数十年は、資源はもとより、水も食料も、安全な土地も無いことさえ考えられます。
日本に昔からあった言葉、「足るを知る」(KNOWS TO ENOUGH)を今一度かみ締める必要が有ります。